2021年05月06日

削除した「ものづくり補助金」

学会誌8月号の3Dプリンタ特集向けの解説記事の締め切り前に,全文を読み返してみた.
その結果,最後のまとめに記載した以下の文章を悩んだあげく,削除することにした.
まずは削除した文章を以下に紹介する.
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中小企業向けの‘ものづくり補助金’を活用した3Dプリンターの導入のためのセミナーや申請サポートが行われている.これにより3Dプリンターの設置台数が増えたことは前向きに捉えるべきである.しかし単に従来製法やプロセスの置き換え手段としてのみを導入目的に捉えてしまうと,従来との比較の中でいつのまにか埃を被ってしまう例が多いと聞く.3Dプリンターの活用に向けた取り組みまで踏み込んだサポートや,啓蒙も併せて行う必要があるのではないだろうか.
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この文章は,4/25のブログで紹介した「なぜ日本で3Dプリンタの活用が進まないか」の文章に続いて書いたものである.補助金で導入したものの,使われていないケースがあることは様々なところから聞いていたので,ぜひ,書いておきたかった.しかし最終的に削除した理由は
1. データがない.活用されていない例がドキュメントになっているものがあればそれを参考文献とすることができたが,ネットにあるのはうまくいった事例やいいことを謳った宣伝ばかり.
2. 解説記事では様々な問題点や活用のための課題を取り上げているが,個別の事案(ここではものづくり補助金)を取り上げる内容にしていないので,少し違和感あり.
3. 画像学会の関係する会社に,補助金申請やサポートをビジネスにしている会社も多いので,上記2つの理由もあり,無理をしないことにした.
しかし,間違った見方ではないと思っているので,この解説記事に関する講演の機会があれば,そこでは強く訴えたいと思う.
posted by インクジェット at 09:23| Comment(0) | 3Dプリンタ

2021年04月25日

何故日本で3Dプリンタが活用されないのか

日本画像学会誌の8月号で3Dプリンターの特集が組まれる.この特集の企画に参画したが,昨年12月の関西シンポジウムで講演した内容をい中心に,自らも解説記事を書くことになった.
ここではこの解説記事の一部であり,「おわりに」記述した表記タイトルに関する文章を以下に記載する.
これまで3Dプリンターに関する講演を行うと「何故,日本は海外に比べ3Dプリンターの活用が遅れているのか?」と聞かれることがある.確かに各種調査による日本の3Dプリンターの市場規模は他の市場,例えばインクジェットプリンター市場の日本と世界の差(割合)より圧倒的に大きな差があるし,Fig.1に示した「ものづくり」における活用Phaseでも欧米や中国の方が先行しているのは事実である.この問いに対する答えは1つではない.欧米に比べDIY文化が根付いていないとか,少量でも採算性が成立する宇宙・航空機などのビジネスが日本ではあまり育っていないというのもあるだろう.もうひとつ強く感じるのは従来製法との比較ではなく,3Dプリンターの特徴を訴求できるはずのビジネスへの進出が難しく,それは従来のチェーン型のサプライチェーンにどっぷりはまってしまい,そこに留まっている企業が多いことも理由の1つではないだろうか.ものづくりにおいて精度,コストはもちろん重要であるが,3章でも例示したようにそれを取り払える市場,アプリケーションの開拓に,サプライチェーンの上位から精度,コストを提示(指示)されて仕事をしているだけではなかなか乗り出せないだろう.チェーン型サプライチェーンにおける’ケイレツ’の陰の部分が現れているのかもしれない.この意味でも新しいプロジェクト型サプライチェーンを試行する価値があると思われる.
posted by インクジェット at 10:29| Comment(0) | 3Dプリンタ

2021年01月13日

プロジェクト型サプライチェーン

昨年の12月の関西シンポジウムで「3Dプリンタ,社会が変える,社会を変える」というテーマで講演しました.
講演の全体像は別途記載したいと思いますが,プレゼン資料を以下で公開していますので,興味ある方はご覧ください.
https://www.inkcube.org/archive.html
[社会が変える]というのは,社会変化,社会状況からの要請(影響)で3Dプリンタの活用場面,開発方向性が変わっていくこと,
[社会を変える」というのは,3Dプリンタの能力,可能性が社会の仕組みなどを大きく変えていくこと.
この両方の見方に共通して,3Dプリンタを巻き込んだサプライチェーンの変化も講演の中で取り上げてみました.COVID-19により,従来のチェーン型のサプライチェーン(下図上左)が分断され,生産活動に支障がでたのはご存じの通りです.COVID-19以前からですが,ネットワーク型(下図上右)に移行し,接点が増えることからこのような状況に強いと言われていました.
これらのサプライチェーンにもちろん3Dプリンタというツール,生産手段を組み込むことは可能ですが,より3Dプリンタの特質,様々な人が3Dデジタルデータに関わることができるという特質を活かすには,新しい[プロジェクト型サプライチェーン](下図下)を提案します.
これは商品(プロジェクト)ごとに,得意な企業,団体,個人が資産・能力を提供し繋がるもので,従来のチェーンで見られる要素だけでなく,資金や使い勝手,潜在顧客からの要望なども巻き込んだ新しい形です.そして商品(プロジェクト)が変われば,構成メンバーも最適なものに置き変わる,というものです.
20210112_01.jpg
そして大事なのは,このプロジェクト型に完全に移行するのではなく,状況に応じて従来のサプライチェーンとの切り替えを柔軟に行えることが大切なのです.
このプロジェクト型ネットワークを提案した関西シンポジウムの直前に,まさにこの形を実践した英国の人口呼吸器製造・供給のためのコンソーシアムがあったことを知りました(VENTILATOR CHALLENGE:4か月の活動を経て解散した).
posted by インクジェット at 17:20| Comment(0) | 3Dプリンタ

2019年05月13日

4DプリンタとHype Cycle

次週,4Dプリンタについて講演を行う先方にプレゼン資料を事前送付し,コメントをいただいた.
コメントの中に4Dと言えども所詮3Dの範疇の様に思えるので,革新的な,あるいは夢のある話も加えて頂きたい,というのがあった.
指摘はもっともで,3Dの世界に生きているわけで,4Dであっても3D技術の上に立脚せざるを得ないことは仕方がない.
ただ,単なる延長ではなく,非連続とも言える新規な価値を加える事が4番目の軸だと言うのが私の定義.
4Dに対する過度な期待は,技術進歩のためのリソース獲得には利用すべき時もあるが,気をつけないとコンシューマ用3DプリンタのHype Cycleと同じ事になる.
コンシューマ用3Dプリンタも,産業用3Dプリンタも2016年からHype Cycleから消えたが,その理由は異なる.
コンシューマ用は何でもできる「夢のような装置」の様に誤解を与え,材料の限界,データ作成の大変さから夢のような装置でない事がわかり,第3次ブームは去った.
一方,産業用3Dプリンタは,既存製造技術との単純比較ではなく,3Dプリンタだから出来る価値に気付いた人達により,着実に実用化が進んだ.
もちろん4Dも後者の道を進みたいが,研究を広げるべき今のステージでは,前者のような「夢」を語ることも大事である.
次週は,究極の機能実現と考える臓器再生を,夢の展開として加えるつもり.
https://www.inkcube.org/
posted by インクジェット at 13:25| Comment(0) | 3Dプリンタ

2019年02月12日

Jet Fusion

HPのJet Fusionの小型化300シリーズ/500シリーズの説明会に参加.
3Dプリンタが本格的生産に向かう中,生産性,材料範囲拡大,あるいは精度や強度に対する課題が大きくなり,これまで標準化の中で分類されてきた7つの方式(いずれも20〜30年前に提案)には分類されない,新しい組み合わせによりこの大きな課題を乗り越える方式,製品が導入されています.
これはIS&TのP4F2017の基調講演でも話し,昨年の論文にまとめたように,インクジェットで商業印刷の大きな課題に対応するため,従来の機能集中型進化(CFP)ではなく,機能分担型(SFP)が起こっており,ここでは新たな組み合わせ,すなわちArchitecturalな試行が必要だと話しました.そしてそれが3Dプリンタにも起きていると.
HPのJet Fusionは数多く起きているArchitecturalな試行の中で,最も成功しているように見え,期待出来るものだと思っています.
で,小型化,カラー対応の580ですが,粉体は従来(4200)と同じPA12ですが,白色度を増すためにTiO2を加えているので,従来機との互換性はありません.
また,Agentも従来通りIR吸収するFusing Agentと,Detailing Agentがありますが,外側0.5mmには,透明のIR吸収剤であるBright Fusing Agent Agentを噴射し,この領域をカラー化します.
消耗品には蒸留水があり,小型化のために粉体を風で送るようにしたため,乾燥防止(静電気防止)のために加湿するそうです.
ラインヘッドが2本,そしてノズルチェックのために紙にプリントする機能がある.
500シリーズは日本では今年の夏に発売予定.
とても期待しています.ただ,ボクセルレベルといつも言ってるのに,ボクセルフォーマットには未対応.FAVに対応して下さい.
https://www.inkcube.org
posted by インクジェット at 17:59| Comment(0) | 3Dプリンタ