2019年04月17日

インクジェット開発センター

少し,いやかなり反応のタイミングとしては遅いと思いますが,山形大学のインクジェット開発センターについて.
開発センターの設立趣旨に記載されている,『ノウハウに依らないインクジェットの理論化,体系化により効率的な開発環境を実現する』には全く共感します.これまでいわゆるインクジェットプリンタ企業に蓄積されてきた膨大な技術資産やノウハウは,ほとんど外に出ることがなかったため,大学でオープンに(といっても参加企業間ですが),理論化,体系化はぜひ進めて欲しいと思います.
センター長の酒井さんは10年来の同志だと思っていますし,スタッフとして参加されている方も良く知っている人ばかりで,開発センターの活動に期待していますし,ぜひ成功して欲しいと思っています.
さて,このような状況でinkcube.orgの役目とは.
以前のブログに書いたように,例えばインクジェットのセミナーに来られる多くの参加者は,山形大学の開発センターに参加されている大きな企業はほとんどなく,例えばたった一人でインクジェット応用を立ち上げようとしているところも多いのです.これも紛れも無い事実です.インクジェット技術の可能性を感じ,展開がここまで広がっている現状で,こういうインクジェット技術の展開のお手伝いをするのがまさにinkcube.orgの役目なのです.最先端の技術開発や,標準化などはやはり大きな拠点が受け持つ役割かもしれません.一方で,インクジェットプリンタ企業では当たり前の技術やノウハウでも,新しくインクジェットに取り組む彼らには大きなステップなのです.彼らは発想が勝負であり,インクジェットはその手段にすぎない場合も多いのです.手段の習得に膨大な時間をかけられない場合も多いでしょう.
インクジェット技術の応用展開は,この異なる2つのアプローチがあり,それらを受け持つ役割も開発センター,inkcube.orgそれぞれが分担すれば良いと思っています.とても良い役割分担が出来ると思っています.
https://www.inkcube.org
posted by インクジェット at 18:46| Comment(0) | インクジェット

2019年02月04日

方言

インクジェットの用語には多くの”方言”がある.”方言”とは”標準語”が存在することを前提にしているなら,標準語がない様々な言い方も各社にはある.
例えば,ノズルからインク滴を吐出しない状態でしばらく放置した後,次にそのノズルから吐出される液滴の飛翔状態(滴速度や方向性)が変ることがある.最悪の場合には不吐出となる.これはノズルからインクの揮発性成分(主に水)が蒸発することに起因する粘度上昇や色材の凝集などが主な原因である.
この現象,あるいはこの現象を定量化する特性のことを私は’Latency’と呼んでいる.他の会社で’発一’と呼んでいるのを聞いたことがあるし,他の呼び名もあるだろう.私の会社では,アメリカの親会社の方がインクジェットの研究が早く始まったこともあり,用語や特性の呼び方はこの親会社の影響が極めて大きい.
コンシューマ市場,オフィス市場を中心としたこれまでのインクジェット開発においては,垂直統合型というか,自社でほとんどの技術を開発しそれをクローズしていたため,用語についても標準語の必要性は高くなかった.
しかし,様々な市場にインクジェットの応用が広がり,ヘッドを中心に各社で開発されていた技術が展開され,コンシューマ市場,オフィス市場で中心となっていた会社以外の技術者がインクジェットに係ってきた現在,用語が異なることは大きな問題になる可能性もあり,これまで以上に注意すべきことであろう.
日本画像学会の「技術用語集委員会」にも所属しているが,「技術用語集」はインクジェット用語のみを集めたものではないのでここに方言を記載するのは難しそうである.2008年,2018年に上梓した書籍「インクジェット」の巻末に記載することも考えたが,各社の方言を集め比較する十分な時間がなく断念した.
しかし,このブログ,あるいはインクジェット技術交流会の取り組みとして,ぜひ,「方言集」をまとめたみたいと思う.
https://www.inkcube.org
posted by インクジェット at 14:05| Comment(0) | インクジェット

2019年01月25日

インクジェット技術のポータルサイト

今年最初の社外でのセミナー講師.テーマはインクジェットと3Dプリンタ概論でした.
2003年に初めて社外セミナーの講師を始めて今年で16年目,明らかにこの数年参加される方の所属に変化が見られます.
最初の頃は参加されるのは,ほとんどインクジェットプリンタを開発されている企業からで,ほとんどの国内インクジェット開発企業の名はあったと思います.ある企業からは,新人教育の一環かと思われるくらい,ある時期毎回多くの若手技術者に参加していただきました.
この16年間で(年間の)参加者総数は大きな変化はないと思うのですが,明らかに所属の多様性が見られます.まったく聞いたことのない会社も増えてきましたし,聞いたことのある会社でもどうしてこの会社(機関)がインクジェット?と思う参加者が圧倒的に増えてきました.
別のコメントにも書きましたが,インクジェット用途がコンシュマー,オフィス用途のプリンタから,産業向け,あるいはものつくりへと広がっている現状をこの参加者の多様な所属が良く現していると思います.
と同時に,セミナーで出される質問に,だんだん明確な回答を出せなくなることも増えてきました.自分の知識や経験,あるいは経験に基づく推測が及ばない範囲まで,応用が広がっているということだと思います.
もちろん,その場で答えられないときは戻って調べたり,もっと専門性をもった方を紹介することもあります.
今も昔も「インクジェット技術を教えてあげる」なんて偉そうな気持ちを持ったことは一度もありませんが,私がインクジェット技術を学ぶ入口なり,様々なところにつながるポータルとしての役目を果たせれば良いと思っています.
inkcube.orgを始めたのもその思いがありました.他の分野の専門家といっしょに,自分の得意な専門性を活かせる領域で,広がりを見せたインクジェットの様々な問題にアドバイスでき,育てることが出来れば良いと思います.
https://www.inkcube.org/
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2019年01月20日

インクジェットの市場拡大と課題

金曜日に所属する学会の委員会総会があり,今年度のインクジェット技術部会の活動を報告しました.例年,大きな活動の1つである技術研究会,この10年はインクジェット技術を適用した市場の広がり,応用の広がりをテーマーにした研究会を多く開催してきました.
これまでコンシューマ,あるいはオフィス市場から,特に産業市場,プロダクション市場に参入する際,市場の性格としての大きな違いは3つあると考えています.
1つ目は紙という浸透性のメディアから非(緩)浸透系のメディア含むメディアの多様性,2つ目はプリントされたものが(対価を得る)商材となること,すなわちケタ違いの信頼性の担保であり,そして3つ目は圧倒的な生産性の高さです.そして同時にその市場性の違いがインクジェット技術に与える課題となります.
メディア多様性に対する対応はラテックスインクやUV硬化型インク,2液反応などのインク技術による対応あり,また別の機会で紹介するシステムとしての対応(これを私は機能分担型進化:CFPと呼ぶ)です.信頼性の担保はインク循環システムや欠陥検出・補正技術の導入であり,高い生産性への対応はラインヘッドの採用や乾燥機構が担っている.もちろんこのように対応策をきれいに3つに分類できるものでなく,導入された技術も1つのみならず様々な課題に対応しており,さらに導入されている技術はここに記載したものだけではありありません.
今後このブログでは,インクジェット技術の進化論についても私の考えを書いて行こうと思います.
https://www.inkcube.org/
posted by インクジェット at 11:18| Comment(0) | インクジェット