2021年01月26日

80kHz

京セラが新しい循環式の1200npiプリントヘッドKJ4B-EXを発表した.
駆動周波数は80kHzであり,これまでより25%向上したと記載されている.
20年くらい前までは,PIJもTIJも新しいヘッドが発表される際には駆動周波数の表記が必ずあり,トレンドを追いやすかった.その後徐々に周波数を公表しない会社が増え,また公表されたとしてもそれがドット1つを形成する液滴の吐出周波数なのか,複数の(バースト)ドロップで1つのドットを形成する際のバーストドロップの吐出周波数なのか説明されていなかった.それでも公表されたプリント解像度やプリント速度から,<コンシューマー市場向けの>PIJでも実質の1ドットを形成するための最高駆動周波数は70kHz程度だと考え,それがインク滴量の微小化が止まった状況で(リフィル速度向上が望めないので)ほとんど向上していない現状をこれまでの講演等でも説明してきた.
70kHzと80kHz,大きな違いではないかもしれない.またPIJの駆動周波数を規定する要因はリフィルだけでなく,駆動パルス波形の長さやクロストークなども現実としてあり,改善の余地はまだあったのだろう.
<産業市場向けではあるが>プレス発表には流路デザインやヘッド構造の最適化を行った結果とある.100%や50%の向上,また100kHzや150kHzではなく25%向上の80kHzなら従来からの最適化で達成可能だったのかもしれない.
今後の上限値を改めて見極める上でも,ぜひ学会で詳しく改善ポイントを発表して欲しい(特許は出願済なのだろうから).しかしこれも残念ながら京セラの学術的な発表もしばらく見ていない.
他の企業にも言えることだが学会での発表をビジネス,利益観点でしか考えられない人が多い.この領域では学会といえども大学だけでなく企業の研究・開発に依存しているところは大きく,業界や市場状況の影響を受けるのは仕方がない.各社,独自の努力のみでビジネスを伸ばしていける状況ならそれは仕方がないが,大きく流れを変えなければいけない岐路にさしかかったとき,技術ベースの議論を経た考察の共有が重要になってくるはずである.そして,その岐路はすでに多くのパスで現れてきている.
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2021年01月25日

学会活動(2)

海外のImagingをスコープとするする学会,IS&Tに1996年から所属している.
この学会はインクジェット含むNIP(Non-Impact Printing)関連のコンファレンスを1981年から開催しており,初めて参加したのは1993年の横浜開催だった.この時,発表は英語であったが日本での開催であったし,日本画像学会のコンファレンスとの共催だったということもあり[海外の学会]という意識はなかった.
1996年にSan AntonioでNIPが開催されたとき,当時の上司から「行って来い」と何故か指名され,ついでに当時共同研究をしていたX社(@Rochester)にも行って情報交換をして来いとも言われた.
初めての一人での海外出張で,月曜日から水曜日までNIPに参加し,木曜日にRochesterに移動,そして金曜日から翌週の水曜日までX社とWork Shopを行った.
NIPではその後エプソンの社長になられた碓井さん(当時は課長だった)の発表もあり,発表後に会場で碓井さん含め発表者と個別に発表内容について詳しく話をしたのを良く覚えている.セッション間のコーヒータイムが頻繁にあり,そこで海外の参加者同士が入れ替わり話し込んでいる様子は日本では見ることがない光景でとても印象的だった.
そういうこともあり,コンファレンスは発表者含む参加者とのコミュニケーションを図ることが重要で,顔を知ってもらうためにも毎年継続して参加し,自らも発表する必要があると感じ,帰国後の出張報告書にも書いた(発表内容は予稿を読めばある程度わかる).そしてすぐにIS&Tの会員となった.この考えはその後も私のコンファレンスに対する基本姿勢として持ち続けており,コンファレンスの運営に関わった際には,参加者同士のネットワーク形成を促すイベントを新たに企画・開催してきた.
ただ残念なことに出張報告書に書いた「継続参加希望」はかなわず,毎年海外のNIPに参加できるようになったのは2007年からである.この経緯もまた改めて書きたいと思う.
さて,金曜日からのX社とのWork Shopは,日本からは私ひとりで4日間にわたりTIJ Printheadに関する様々な項目についての情報交換と議論をした.これもその後,海外のパートナーとの協業を進めるうえでの自信となった.
この時の出張報告書に,『スライドやOHPでの発表に代わり,パソコン+(液晶ビューワー)での発表が増えている,特にマイクロソフトのプレゼンテーションは新鮮であった』とある.X社とのWork Shopは日本側の全ての説明を私ひとりで行ったので,100枚以上のOHPを休日出勤で作成し出張に持って行った.今では考えられないことだ.
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2021年01月21日

学会活動(1)

私が学会での活動を始めた「きっかけ」の1つを書いてみる.
20代の頃からインクジェット関係の発表があるコンファレンスには,チャンスがあれば参加させてもらっていた.初めて自分で発表したのも28歳だった.
自分の判断で自由に行ける立場になった30代後半からは,今所属している国内の学会の年次大会には必ず参加していた.ただ聴講するだけではなくほとんどの発表に対し質問をしていたと思う.わからないことを聞くというより,発表内容の矛盾(論理的展開の不十分さも含め)や,成果を示すための不足分などを質問,コメントしていた.だからきっと発表者にとっては厄介な存在だったと思う.発表者が私の質問に答えられず,後から上司や関係者がわざわざ席まで説明に来てくれたことも多々あった.
コンファレンス運営の不文律として,会場から質問がない場合や質問時間が余った場合は,座長が質問をすることになっている.(2004年の年次大会だったと思う)インクジェットのセッションで座長からの質問があまりに幼稚でくだらなかったことにショックを受けた.学会の組織を良く知らなかったのだが,「この学会のインクジェット担当の組織(インクジェット技術部会)はどうなっているんだ」と呆れてしまい,それなら自分の方がもっとうまく運営できると考えた.(後で知ったのだがこの時の座長はインクジェット技術部会とは全く関係なく,インクジェットの素人だった)
会社の学会関係の伝手を頼り,インクジェット技術部会に入会希望を伝えた.偶然にもこの時,インクジェット技術部会でも研究会の講師候補として私の名前が挙がっていたようで,めでたくインクジェット技術部会委員になった.2005年のことである.
2006年の途中からインクジェット技術部会の主査になったのだが,主査になって手をつけた1つは,もちろんコンファレンスのインクジェットセッションの運営(座長等)をインクジェット技術部会が担当するようにしたことである.
なぜ,このエピソードを今書いたか.最近のテレビ等の質疑や討論で本質を突いていない質問や議論があまりに多すぎる.もちろん立場上言えない場面も多いのだろうが,本質を議論しないで,真実を明確にしないで意味のある対応ができるだろうか.そんな嘆かわしい状況があまりに多すぎると思う.
「きっかけ」のもう1つは,初めて1996年に海外のコンファレンスに参加したこと.これはまた別な機会に.
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2021年01月13日

プロジェクト型サプライチェーン

昨年の12月の関西シンポジウムで「3Dプリンタ,社会が変える,社会を変える」というテーマで講演しました.
講演の全体像は別途記載したいと思いますが,プレゼン資料を以下で公開していますので,興味ある方はご覧ください.
https://www.inkcube.org/archive.html
[社会が変える]というのは,社会変化,社会状況からの要請(影響)で3Dプリンタの活用場面,開発方向性が変わっていくこと,
[社会を変える」というのは,3Dプリンタの能力,可能性が社会の仕組みなどを大きく変えていくこと.
この両方の見方に共通して,3Dプリンタを巻き込んだサプライチェーンの変化も講演の中で取り上げてみました.COVID-19により,従来のチェーン型のサプライチェーン(下図上左)が分断され,生産活動に支障がでたのはご存じの通りです.COVID-19以前からですが,ネットワーク型(下図上右)に移行し,接点が増えることからこのような状況に強いと言われていました.
これらのサプライチェーンにもちろん3Dプリンタというツール,生産手段を組み込むことは可能ですが,より3Dプリンタの特質,様々な人が3Dデジタルデータに関わることができるという特質を活かすには,新しい[プロジェクト型サプライチェーン](下図下)を提案します.
これは商品(プロジェクト)ごとに,得意な企業,団体,個人が資産・能力を提供し繋がるもので,従来のチェーンで見られる要素だけでなく,資金や使い勝手,潜在顧客からの要望なども巻き込んだ新しい形です.そして商品(プロジェクト)が変われば,構成メンバーも最適なものに置き変わる,というものです.
20210112_01.jpg
そして大事なのは,このプロジェクト型に完全に移行するのではなく,状況に応じて従来のサプライチェーンとの切り替えを柔軟に行えることが大切なのです.
このプロジェクト型ネットワークを提案した関西シンポジウムの直前に,まさにこの形を実践した英国の人口呼吸器製造・供給のためのコンソーシアムがあったことを知りました(VENTILATOR CHALLENGE:4か月の活動を経て解散した).
posted by インクジェット at 17:20| Comment(0) | 3Dプリンタ

2021年01月05日

プリンタ選び

昨日記載したプリンタエラーのその後と最近のコンシューマ用インクジェットプリンタに一言.
(会社では競合評価・・・という名目で様々なプリンタを購入してきましたが,自宅用のプリンタを買うのは7年ぶり)
結局エラーは解決できず(廃インクタンクフルのフラッグが立ったのだと推測したのだが),最後はパワーオンさえできなくなり,新しいプリンタの購入を決定.
もっと早く買い替えを決断しても良かったのだが丸1日修復を試みたのは,年賀状の返信をすぐに出したかったこと,それになんといっても年末・年始のために購入したインクカートリッジがまるまる1セットあったこと.
同じメーカーでも新機種にすればインクカートリッジも変わり,購入したインクカートリッジが無駄になってしまうから(7年もたてばカートリッジの型番変わるのは仕方ないが,実際のサイクルはもっと早い).これは後にもコメントしたい.
新しいプリンタ選択に際し,必須条件はCD/DVDのレーベルプリントができること.
昨日も書いたように4色インクでこれを満たす機種はあったが少し背が高いのが気になったので,しかたなく6色で今使っているのと同じメーカーの機種を選択.Amazonで買う前に地元の量販店で実物と在庫を確認.実物を見て良かった.用紙トレイが飛び出して中に納まらないのがデフォルト.この何年かコンシューマー用のプリンタの数少ない良くなった点として手差しトレイの復活とフットプリント(設置面積)の縮小はあると考えていたが,用紙トレイを飛び出させたこともフットプリント縮小の一因なの???
デザイン許せず,その場で唯一4色でレーベルプリントできる背の高い機種への変更を決定.
しかし在庫がないらしい.店員に入手時期を確認したくても今の家電量販店って店内で案内する店員さんはほんといなくなった(携帯電話のコーナーはたくさん人がいるのにね).家電の性能や使い勝手を聞くことは今はほとんどないので普段は別に困らないが,「お取り寄せ」と書いていて聞く人がいないとは.やっと見つけて尋ねたら納期は2月と・・・
年賀状書けない.結局ネットで購入しようと検索したら,やはり1ヵ月待ち.でも一昨年前の機種も掲載されており,2日で届くというので注文.
これが顛末です.
2017年に発表した「インクジェット進化論」の中で,一般ユーザーにとってはほとんど向上が認識できない性能進化に注力するより,別な方向に向けるべきだと訴えた.インクの型番ももっと長く共通で使えるようにしてほしい.もちろん耐久性,発色等様々な観点で性能向上のためインク組成を変えているのはわかっているが,多くの消費者はそこでの喜びより,買い替えた新機種でも同じ型番が使える方がありがたい.
インクの値段を下げることの要求が高いのはわかっているが,そこはビジネスモデルも絡んでいるので別な機会に話そう.
せめて,同じメーカーの買い替えなら,古いインクカートリッジを買い取るか,新しい機種のインクカートリッジと交換して欲しい.
最後は一般消費者の立場でのコメントでした.
posted by インクジェット at 12:00| Comment(0) | インクジェット