2019年05月19日

Gutenberg Prize

Great Achievements and contributions to inkjet technologies and evolution concept to Three-dimensional technologies
2019年のJohann Gutenberg PrizeをIS&Tから受賞しました.先頭に書いた文章が,受賞理由です.
インクジェットでの研究実績が認められたのも嬉しいですが,受賞理由に「3Dへの進化論」というのが入っているのが,なお嬉しい.
確かに過去,IS&TのJournalにも何本かの論文を出していますが,高いレベルの論文を出している人は他にもいます.自分なりに受賞できた理由を分析すれば,単に技術的なレベルの高さだけではなく,インクジェット技術全体をMOT的に俯瞰した研究者・技術者は非常にユニークなんだと思います.もちろMOTの研究者がインクジェットをテーマーに取り上げて論じることは時々見られますが,インクジェット側からそういう見方をしたのはまれだと思うし,さらに分析するだけでなく,そこから導いた結論を自ら実践していることもインクジェット側にいるからこそできることだと思います.
グーテンベルクの発明した活版印刷は,革新的な技術であっただけでなく,その後ルネサンスの拡大や宗教革命につながるなど,社会を大きく変える手段になりました.グーテンベルク賞の受賞は,これまでの私のインクジェット,3Dの研究成果が次につながるものだと評価されたのだと考えたいし,この先,社会を大きく変えていくところまで,研究活動に関わっていきなさい,という使命を与えられたものだと改めて感じました.
posted by インクジェット at 14:24| Comment(0) | Technology

2019年05月13日

4DプリンタとHype Cycle

次週,4Dプリンタについて講演を行う先方にプレゼン資料を事前送付し,コメントをいただいた.
コメントの中に4Dと言えども所詮3Dの範疇の様に思えるので,革新的な,あるいは夢のある話も加えて頂きたい,というのがあった.
指摘はもっともで,3Dの世界に生きているわけで,4Dであっても3D技術の上に立脚せざるを得ないことは仕方がない.
ただ,単なる延長ではなく,非連続とも言える新規な価値を加える事が4番目の軸だと言うのが私の定義.
4Dに対する過度な期待は,技術進歩のためのリソース獲得には利用すべき時もあるが,気をつけないとコンシューマ用3DプリンタのHype Cycleと同じ事になる.
コンシューマ用3Dプリンタも,産業用3Dプリンタも2016年からHype Cycleから消えたが,その理由は異なる.
コンシューマ用は何でもできる「夢のような装置」の様に誤解を与え,材料の限界,データ作成の大変さから夢のような装置でない事がわかり,第3次ブームは去った.
一方,産業用3Dプリンタは,既存製造技術との単純比較ではなく,3Dプリンタだから出来る価値に気付いた人達により,着実に実用化が進んだ.
もちろん4Dも後者の道を進みたいが,研究を広げるべき今のステージでは,前者のような「夢」を語ることも大事である.
次週は,究極の機能実現と考える臓器再生を,夢の展開として加えるつもり.
https://www.inkcube.org/
posted by インクジェット at 13:25| Comment(0) | 3Dプリンタ

2019年04月17日

インクジェット開発センター

少し,いやかなり反応のタイミングとしては遅いと思いますが,山形大学のインクジェット開発センターについて.
開発センターの設立趣旨に記載されている,『ノウハウに依らないインクジェットの理論化,体系化により効率的な開発環境を実現する』には全く共感します.これまでいわゆるインクジェットプリンタ企業に蓄積されてきた膨大な技術資産やノウハウは,ほとんど外に出ることがなかったため,大学でオープンに(といっても参加企業間ですが),理論化,体系化はぜひ進めて欲しいと思います.
センター長の酒井さんは10年来の同志だと思っていますし,スタッフとして参加されている方も良く知っている人ばかりで,開発センターの活動に期待していますし,ぜひ成功して欲しいと思っています.
さて,このような状況でinkcube.orgの役目とは.
以前のブログに書いたように,例えばインクジェットのセミナーに来られる多くの参加者は,山形大学の開発センターに参加されている大きな企業はほとんどなく,例えばたった一人でインクジェット応用を立ち上げようとしているところも多いのです.これも紛れも無い事実です.インクジェット技術の可能性を感じ,展開がここまで広がっている現状で,こういうインクジェット技術の展開のお手伝いをするのがまさにinkcube.orgの役目なのです.最先端の技術開発や,標準化などはやはり大きな拠点が受け持つ役割かもしれません.一方で,インクジェットプリンタ企業では当たり前の技術やノウハウでも,新しくインクジェットに取り組む彼らには大きなステップなのです.彼らは発想が勝負であり,インクジェットはその手段にすぎない場合も多いのです.手段の習得に膨大な時間をかけられない場合も多いでしょう.
インクジェット技術の応用展開は,この異なる2つのアプローチがあり,それらを受け持つ役割も開発センター,inkcube.orgそれぞれが分担すれば良いと思っています.とても良い役割分担が出来ると思っています.
https://www.inkcube.org
posted by インクジェット at 18:46| Comment(0) | インクジェット

2019年04月07日

さよならテキスト

4/1付けで新設された部署に異動,さらに4月半ばには拠点も異動.引っ越し先は極めて収納スペースが無く,今のオフィスで持っている過去の膨大な技術資料,参考資料,試作品などなど,ほとんどは処分しないといけない.定年になる半年くらい前から,感傷に浸りながらゆっくり処分したり,電子化する予定は吹っ飛んだ.今の場所には他の人が来るはずだから,対応を先延ばしするわけにもいかない.
処分するにも時間がかかり,そんな暇はないのだけれど.
とりあえず過去の講師を務めたセミナーのテキスト.半分以上は捨てたり,新人にあげていたので残っているのは一部だけど.思い切って捨てよう.自分の過去が消されるみたいで少し辛い.
https://www.inkcube.org
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posted by インクジェット at 08:20| Comment(0) | 日記

2019年04月02日

和歌山(2)

革新的な技術を生み出しても,その技術が変える可能があるバリューチェーンやビジネスモデルにまで踏み込まなければ,起こる変化は限定的だと前回のブログで書いた.バリューチェーンに存在するプレイヤは自らそれを破壊する動き(革新的な技術の導入)を起こすことはまれであると.
インクジェット技術を「早い」,「きれい」,「安い」という既存プリント技術の評価軸で評価した場合,全ての軸で優位性を持っていれば代替は(時間はかかるが)いずれ起きる.しかし,これまでとは別の軸に価値が生まれる場合,たとえばオンデマンド対応(多品種,少量対応)という価値があったとしても,従来の価値軸での勝ち負けが重要な決め手になることは良くあることである.ましてや新しい価値がぼんやりとしかユーザー側に見えなければ,なおのこと代替は起きない.もう少し具体的な話をする.画質(堅牢性含む)に関し,既存の印刷を見ている人は,印刷と同じ画質であることを望む.それを最終顧客(クライアント,一般あるいは消費者)が望んでいると信じている.確かに長年の経験からその閾値を引いているから,全てにおいてそれが過剰だとは言えない.市場で絶対に品質問題を起こしてはいけないから,閾値を高くしているのも理解できる.しかし,単に横並び意識が強いだけであるなら,もっと閾値を下げても大きな問題にならないことも現実にはある.
技術の提供者が最終顧客にもなり得る立場であれば,少しばかり冒険が出来る(閾値を下げる)ないだろか.また,新規技術を導入する際に,妥協できる軸も良く理解しているのではないか.花王はインクジェットの技術提供者でもあり,それを享受するユーザーでもある.他が出来ない大胆な試みを期待するし,それが花王へのチャンスにもつながると思っている.
https://www.inkcube.org
posted by インクジェット at 14:38| Comment(0) | Technology